品質は工程で造り込む

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品質は工程で造り込むとは

品質不良は100%存在しないことが理想ですが現実はなかなかそうはいきません。品質不良が発生した場合、品質不良の発見が下流に行けばいくほどコストが膨大に増えます。そこで、自工程で品質を保証し、万が一不良が発生した場合でも後工程に不良が流出しないためのしくみが「品質は工程で造り込む」です

検査工程はムダの一つ

「品質は工程で造り込む」導入のゴールは品質を工程で保証できる状態ですが副次的なゴールとして検査工程の廃止があります。

不良の流出防止のために検査工程を設けることは一般的ですが、検査そのものは何も加工もしない=付加価値を産んでいない原価のみを高める要素です。しかし、上述のように不良が社外に流出した場合の損失金額の期待値があまりに大きいので原価を高めてでも検査工程を設けるのが現実です。一方「品質は工程で造り込む」を導入して検査工程を排除すれば、原価低減や製造リードタイムの短縮を実現することが可能となります。

品質を工程で造り込む方法

品質を工程で造り込むためには、まずは各工程が保証する品質を明確に定めることが重要です。例えば切削工程で造り込む特定箇所の寸法、研磨工程で造り込む特定箇所の精度や面粗さといったものです。各工程への作業指示でどの品質を保証するのかを明確にすること、各工程の作業者が自工程が保証する工程を理解することが必要となります。

次に品質不良を後工程に流さないことが重要です。そのためには不良の発生防止と不良の流出防止という2つの考え方があります。

まずは不良の発生防止を優先します。例えば少量多品種生産においては過去の類似製品の加工ノウハウ等を共有・参照することで精度を出したりミスを防止するといったことです。

本来は作業指示や加工ノウハウどおりに加工すればだれでもその品質が保証できる状態(=発生防止)が実現できれば一番良いのですが、受注生産型の少量多品種生産などなかなか実現が難しい生産形態もあります。そこで不良の流出防止が重要となります。流出防止で重要なのは、

・異常で止まる
・異常で止められる

というしくみを工程に持たせることです。ここでいう異常とは自工程で品質を保証できないあらゆる証拠のことです。

異常で止まるとは、機械が異常を検知して自働で止まるということです。例えば刃具が折れたことを検知して加工を自働で止めて通報するといったことです。

次に、異常で止められるとは、工程の担当者が異常を検知して生産をストップして管理者に連絡することです。特に受注生産型の少量多品種生産では機械に自働で判断させて「異常で止まる」だけですべての品質を保証するのは難しいことが多いです。そこで管理者だけでなく工程担当者の「異常で止められる」という意識づけが重要となります。

トヨタ生産方式を導入している量産ラインでは「止める・呼ぶ・待つ」という形で工程担当者が異常を検知したら(実際に異常という確信がなくても)生産ラインを止めてアンドンを使って異常発生を管理者に通報することを徹底しています。そして管理者は生産ラインを止めた担当者に「呼んでくれてありがとう」と伝えます。量産ラインでなくても日頃から管理者が工程担当者からの異常検知の報告に対して「ありがとう」という気持ちを伝えることが品質向上のための雰囲気づくりに繋がります。

一方、工程担当者が異常を検知して流出防止するためには、日頃から自工程で保証すべき品質が満たされていることを自工程で証明することが必要です。例えば自工程で加工した箇所の寸法が公差内に収まっていることを測定して記録するということです。こうすれば寸法が公差に収まっていないといった不良や測定時に打痕やサビなどの不良を発見することができます。

工程内で品質を保証するのに重要なのが測定具の選定です。例えば百分台の品質を保証するときはノギスではなくマイクロメータを使うといったことです。また、ある程度寸法のパターンが決まっている場合はゲージを使うことで測定ミスも測定スピードも減らすことが可能です。

このように品質を工程で造り込むためには管理者だけでなく各工程の担当者全員で品質を造りこむんだ!という雰囲気、意識、そして品質ノウハウの共有が重要です。そのためには日頃の管理者とコミュニケーションが大事です。

見える化の重要性

管理者と現場のコミュニケーションが品質保証の入口といっても過言ではないですが、コミュニケーションそのものの品質が重要となります。コミュニケーションの品質を高めるためには共通認識を共通言語で話すことが大事です。

いくら活発にコミュニケーションをしても言った側と聞いた側が異なる解釈をしていれば不良発生の原因となります。共通認識を醸成して共通言語を使って話すためには共通の情報を見ながら話すのが一番手っ取り早いです。例えば図面、工程設計、作業指示、生産計画、生産実績、過去の類似製品の加工ノウハウ等を見ながらコミュニケーションができれば解釈が異なる確率もぐっと下がります。このように普段から情報を見える化してその情報を元にコミュニケーションできるようにしておくのが品質を工程で造り込むための第一歩です。

普段から見える化するためのツールは図面などの紙媒体だけでなくホワイトボードやパソコンやタブレット等を使います。現在では見える化のための見やすい、使いやすい、リーズナブルな価格のITツール等も出回っています。こういったツールを導入するのは「品質は工程で造り込む」ための近道になります。

以上が、「自動化」の基本原則の一つ「品質は工程で造り込む」です。

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