後工程引取り

後工程引取りとは

後工程引取りとは、後工程が必要なものを必要な数だけ前工程から引取り、前工程は後工程に引取られた分だけを生産する仕組みのことです。これは後工程(=お客様)の需要に基づいた生産を行うためです。

この方式では、顧客の需要の情報が顧客に最も近い工程(通常は出荷工程)に届くと、前工程に必要な数だけ引取りにいきます。引取られた前工程は、引取られた分を生産するために必要な部品をさらに前工程に引取りにいきます。このように、「後工程が引取る作業(後引き)」と「前工程が生産する作業(後補充生産)」の2つの作業が連鎖することで、顧客の需要の情報によってのみ生産できる、自律した生産システムが実現します。

後工程引取りの作業区分

区分作業内容
後引き工程が必要な時に、必要なものを、必要な数だけ、引取る
後補充生産前工程に最小限の完成品在庫を持ち、後工程がそこから引取った分だけ生産して補充する

この2つの作業を行うための生産指示の情報を伝達する道具が「かんばん」です。

かんばん方式

かんばん方式とは、トヨタ生産方式の基本的な考え方になっており、後工程であるお客様からさかのぼって生産を管理する仕組みです。工程順に管理して、上流の都合で生産したものを下流に押込むという一般的な大量生産方式の真逆になります。

つまり、後工程(=お客様)が必要な分だけを流すという考え方です。この考え方はリーン思考でも基本原則となっております。

かんばんの役割

かんばんの役割は以下の3つに分類できます。

役割機能
生産・運搬の指示情報の伝達何を、いつ、どれだけ生産または運搬するかをリアルタイムで伝達生産の順番を指示(かんばんが外れた順番に生産を仕掛ける)
目で見る管理の道具造りすぎ、運びすぎのムダを防止(かんばんの枚数で制約)生産の遅れ進みの見える化(かんばんの動きによる生産能力や在庫の状況の把握)
工程改善・作業改善の道具問題点の顕在化不良や異常の責任所在の明確化

かんばんの種類

かんばんの種類は3つに分類され、どの製品を生産するかを指示する「仕掛けかんばん」と、どの製品を引取るかを指示する「引取りかんばん」と、後工程引取りとは別で生産指示を出す「臨時かんばん」があります。

仕掛けかんばん

仕掛けかんばんとは、「後補充生産」を指示するかんばんです。どの製品をどれだけ生産するかを指示します。仕掛けかんばんには「工程内かんばん」と「信号かんばん」があります。

工程内かんばん

工程内かんばんとは、「工程の流れ化」の道具であり、後工程に引取られた量を、引取られた順番に生産するように仕掛けるかんばんです。

製品ごとに色を分けたり、背番号を大きく記入して見やすくします。1製品または1箱につき1枚のかんばんがつきます。このかんばんの総枚数が、その工程の仕掛品と完成品の総数の上限を制限します。

信号かんばん

信号かんばんとは、「小ロット生産化」の道具であり、段取り替えが必要なロット生産工程が後補充生産する製品とそのロットの量を仕掛けます。

かんばんを振り出すタイミング(何箱に1回振り出すかなど基準数)とかんばん1枚で生産するロットの量が記載されています。トヨタ生産方式では、三角形のかたちをしたかんばんを用いるので「三角かんばん」とも呼ばれます。

引取りかんばん

引取りかんばんとは、「後引き」の道具であり、何をどれだけ引取るかを指示する、いわゆる買い物リストです。引取りかんばんには「工程間引取りかんばん」と「外注部品納入かんばん」があります。

工程間引取りかんばん

工程間引取りかんばんとは、自工場内の工程間で、後工程が前工程から必要なものを引取るためのかんばんです。

かんばんの総枚数は1、2枚で、運搬単位が記載されています。

外注部品納入かんばん

外注部品納入かんばんとは、仕入れ先との工程間で使用するもので、使用した製品と数量だけを仕入先に納入してもらうための情報を伝達します。

仕入れ先が納入する部品に付いてきますが、後工程(自工場)で使用した分だけが納入されるため、「後引き」の道具となります。かんばんには納入サイクルが記載されています。

かんばん運用ルール

かんばんの運用には6つのルールがあります。

No.かんばん運用ルール内容
1製品は100%良品であることかんばんによって引取る製品(「店」内の製品)はすべて良品であること
2かんばんが外れた分だけ後工程が前工程から引取るかんばんが外れた枚数が後工程が必要な数なので、かんばんの枚数分だけしか引取らない。かんばんを外すタイミングは、1個でも部品を使用したとき。
3前工程は、かんばんが外れたものを、外れた順に、外れた分だけ生産する後工程が引取ったものを引取った順で引取られた分しか生産してはいけない。造りすぎを抑制し、余分な在庫を持たないようにする。
4かんばんのないときは、造らない、運ばないかんばんの動きが生産や運搬を指示するので、指示なく行動してはいけない。造りすぎのムダと運搬のムダを発生させない。
5かんばんは現物に必ず付けておくかんばんの動きが生産や運搬を指示するので、必ず現物と1対1で運用すること。情報だけや物だけが動くと生産が乱れ、欠品や造りすぎ・運びすぎが発生する。
6かんばんの入数と実数は合致していることかんばんに記載されている収容数と、現物の数は必ず一致すること。収容数が不足している場合は「端数品カード」をかんばんと一緒に付けて明示する。

これらのルールを順守することで「後工程引取り」による自律した生産が実現できます。

以上が、「ジャストインタイム」の5原則の1つ「後工程引取り」です。

タイトルとURLをコピーしました